中学入試は、「親と子の共同作業」の結果、栄冠を得るものです。保護者の関与がどのようになされたのかが、重要になるのです。「いらぬお節介」と言われそうですが、子供たちの授業での態度など見ていますと、保護者の姿勢が濃厚に現れていることが多々あります。保護者の方と話してみて、納得できることがよくあるのです。まず、「隗より始めよ」です。保護者の姿勢から考えていただきたいものです。

  日本のエジソンの名言:天才とは1%のひらめきと99%の発汗である


保護者の姿勢として大切なことは、次の項目です。

 意志決定、子供との会話 →@〜B 
 問題文の保護者の関与(一般)   →C〜I 
 保護者の関与(学習)    →J〜P 
 感情を抑える      →Q、R
 入試や塾の方針の理解       →S〜22
 その他 →23〜27

 

@子供との会話が頻繁に行われていない

[説明]子供との会話は意志の疎通を図るだけではなく、論理的に物事を考えさせることができます。論理的に考えることは、文章の読解力にもつながり、また、表現力にもつながります。保護者が論理的ではない場合、子供も論理的ではないことが多いのですが、それでも会話がきちんとなされていれば、意外と子供の方が論理的になっている場合がよくあります。子供は柔軟であり、保護者を越えて育っていくものです。自分は論理的ではないから、子供たちも論理的ではないなどと諦めないで下さい。
 
 

A保護者(同居の祖父母を含む)間で意志の統一が図られていない

[説明]中学入試に反対する人がいると、成績などでもめているとき、ついつい「勉強する必要性がない」と、反対している人が子供に言ってしまいます。渡りに船と子供は楽な方へ逃げてしまってしばらくは勉強せずに過ごすことになり、その時期の学習内容に空白が生じ、弱点箇所が生まれます。
 
 

B進路について子供の納得・同意を得ていない

[説明][説明]10〜12才ともなると、第2反抗期?にさしかかります。その時期に保護者の言いなりにならないこともあります。そのため、「何故、中学受験をするのか」、「何故、この中学なのか」、など子供の納得を得るようにしておいて下さい。それが、スランプに陥ったときや勉強する気が失せたときの説得材料となります。
  なお、受験中学に憧れを持たせることも大切です。文化祭や体育祭、学校説明会などに同伴させて下さい。 
日程は各学校に問い合わせて下さい。
 
 

C子供だけに任せている

[説明]自立心をつけるためか、放任主義を決めている保護者もいます。まだ10〜12才です。干渉のし過ぎはよくはありませんが、多少は干渉するようにして欲しいものです。
 
 

D受験期になっても習いごとなどをやらせている

[説明]音楽関係の場合、空白の期間があると、その後に影響があるかも知れません。しかし、中学入試を考えているのであれば、6年では、ある程度はセーブして欲しいものです。第1志望の合否判定が、「A」であればそのままでも構いませんが、「C」以下だったり、成績が下がってきたときには注意したいものです。
 
 

E子供が頑張ったとき、誉めない

[説明]出来たときは誉め、悪かったときは慰める。それは常識です。一方に偏るのはよくありませんが、少なくとも頑張ったときには誉めてやっ て欲しいものです。それが【やる気】につながっていくからです。特に、中学入試に反対している保護者の場合、反応を示さないことが多々あります。困りますネ
 
 

F保護者の決断力、行動力に欠けている

[説明]勉強方法、成績など悩んでいるとき、相談するまでに時間がかかったり、相談した後の次の行動力、実践力に欠けると、その時間が無駄になることがあります。何かあれば、即、行動です。また、様々な情報収集に積極的に行っていくことも大切です。
 
 

G保護者のプライドで、子供を過大評価、過小評価している。または、
保護者の学歴や兄弟、親戚の子供たちのレベルと比較している

[説明]子供たちは、自分の等身大の評価を期待しています。過大評価も過小評価も期待はしていません。過大評価は子供の重圧となり、過小評価は子供のプライドを傷つける結果になり、いずれも勉強から逃げ出したい欲求にかられます。等身大の評価の下、少しの背伸びで到達できるレベルをきちんと掌握することが大切でしょう。最初の目標を、まずクリアし、次の目標を達成させていくというスタンスを持って、子供に接していただきたいものです。
  また、「人は人、自分は自分」という考えも子供たちにはすでに芽生えています。自我の形成です。他者との比較は子供のプライドを傷つけるだけで、何ら解決策にはなりません。他者と較べるときには、特に気をつけて欲しいところです。当然、保護者の学歴も子供にとっては何ら関係のないことです。期待したいのは分かりますが、必要以上にそれを持ち出しても、単に子供のやる気を無くするだけの結果に終わるでしょう。
 
 

H保護者間の問題や経済的な問題などが、子供に伝わっている

[説明]子供たちは保護者の喜怒哀楽について敏感です。それも受験生ですから、かなりナーバスな状況に置かれているはずです。まだ10〜12才ですから、大人の会話の全てが正しく理解できているとも思えません。そのような子供たちに、保護者の責任である様々な問題を聞かせることは、学習する意欲を減退させる原因となることが大いに考えられます。家庭でのいざこざは子供に知られないようにしたいものですが、知られたときには、子供の納得のいく説明をすべきでしょう。当然、その後のケアやチェックは慎重にしたいものです。
 
 

I近視など肉体的な問題を解決していない

[説明]近視をメガネで矯正していない場合、前の方に移動しても、左右に書かれた文字は見にくいのは当然です。そのため、黒板に書かれた図や文字を、目を細めて確認することになります。全エネルギーは視神経に集中して、解き方の理解に回されることはありません。場合によっては、板書の写しに時間がかかり、次の問題の解説を聞き漏らすことも多々あるはずです。受験を選択した限り、近視が進行することを心配するよりも、実力を上げることを目指すべきです。少なくとも講義中は、メガネをかけさせて欲しいものです。
 
 

J計算ミスが多いとの理由で、計算演習をやらせている

[説明]初めて学習するときは、2週間程度は徹底して計算漬けにしなければなりませんが、それが過ぎれば、計算に力を入れるのは得策ではありません。何故なら、文章題に限らず、図形問題でも計算を伴うからです。それらを解く過程で、ミスを無くするようにさせることの方が大切です。ただ、心配な保護者の方は、朝の寝起きに、志望中の計算問題より少し難度の高い問題を5問〜10問ほどやらせて下さい。そのときの間違いは、その子供固有の本能的な間違いであり、それをKの方法で集計して、生徒に知らしめることが重要です。この演習方法は6年の12月までです。
 
 

K間違えたとき、間違いの原因を日常的に点検して、
それを子供にフィールド・バックしていない

[説明]正しいときは発見できないことも、間違えたときには、子供固有のミスの原因を発見できます。式が書かれていれば、考え方はまず合っていると考え、計算ミスか他のミスかを、発見することに努めて欲しいものです。それを閻魔帳などに転記しておくことで、子供固有のミスのパターンが見えてくるはずです。それを子供に伝え、認識させることが保護者の重要な役割の一つです。
 
 

L文章題では、数量関係(等しい関係)の押さえや問題文の整理ができているかどうか
をチェックしていない

[説明]文章題で大切なことは、等しい関係です。その押さえができて始めて問題が解けるのです。少し長目の問題では、数量関係を整理することが必要になります。適当に、数の組み合わせで式を作り、計算していないかどうかをチェックして欲しいものです。意外と多いですヨ、このいい加減さは。
 
 

M図形で、図を描いているかをチェックしていない

[説明]図形の命は「図形」です。図形問題で図を描かないのは怠慢以外の何ものでもありません。図を描かせる癖を付けさせて欲しいものです。
  なお、図を描くことを苦手としているのは、低学年の頃より、学校で描く訓練を積まされていないからです。今からでも遅くはありません。まず、写すことから始めて下さい。
 
 
N移動する図形や立体図形で、素材を制作して具体性で理解させていない
[説明]習い始めには、素材を使って具体性の中で、子供にやらせてみることが大切です。テストでは使えないとの理由で、それを怠ると、何時までたっても理解できることはないでしょう。
どの問題で、どのような素材を使うのかは、 【保護者予習】クラスでは説明しています。
 
 

O保護者の知識をもとにして指導している。または、現時点の学習内容を掌握していない

[説明]河合塾では、6年1学期までは、新出事項の学習になります。この間に学習していない事柄で問題の解き方を指導するのは、子供を混乱に陥れるだけで何の益もありません。今までに学習してきた事柄で指導して欲しいものです。もし、未習の方法で説明する場合には、その基本から説明するようにして下さい。
方程式も同じことです。
 
 

P家庭教師をつけて安心している

[説明]塾も同じことですが、子供との接触時間の多さと真剣さは、保護者が一番です。ミスの原因を追及できるのは、保護者しかいません。家庭教師にそれを任せていては、雇う時間が多くなり、切りが無いでしょう。やはり、保護者が何らかの形で関与すべきです。
 
 

Q日常の得点に一喜一憂している。すなわち、保護者が得点にナーバスになっている

[説明]人間、良いときもあれば悪いときもあります。1回1回のテスト・ドリルで一喜一憂していては、長丁場である入試を制覇できません。長い目で、見守っていくことが大切です。保護者が一喜一憂していると、逃げ道としてカンニングを繰り返すことになり、その子供の真の力が判断できず、対策が手遅れになります。
  カンニングの原因は、保護者のナーバスさにつき合いきれないためです。日常の得点だけで、子供を追いつめることは避けたいものです。
 
 
R少し成績が下がると、受験校をレベル・ダウンして、それを子供に言ってしまう
[説明]やらせる方便として使っているつもりでしょうが、子供の反応はそれに応じて学習方法や学習量を変えてしまいます。それが結果的には、志望中を下げ続けてしまうことになりますから、最後の最後まで、第1志望を変えずに、1月初旬の段階で引導を渡して欲しいものです。なお、女子の場合には、4科と2科では子供の負担が大きく異なりますから、その決定は講師と相談の上、6年の8月末頃に行うのがよいでしょう。
 
 

S保護者が私立受験経験者の場合、自分の時代とのギャップを認識していない

[説明]10年一昔です。10年前と較べても入試問題は隔世の感があります。保護者の受験は25年以上前です。全く参考にならないと考えて、一度、情報収集を行って下さい。
 
 
21.河合塾の学習システムを正しく理解していない
[説明]河合塾では、中学入試のための《予習テキスト》を自宅で学習し、その修得度を土曜日・日曜日の【テスト・ゼミ】で確認する、というのが 根幹になっています。
 その補完として、【予習クラス】がありますが、このクラスも、《予習テキスト》を自宅で学習してくることが前提となっています。それは、短時間に1講を全て解説する時間的な余裕がないからです。
今年からロングクラスを設置。これも多少は予習が必要です。
 
 

22.河合塾のクラス・レベルを正しく理解していない

[説明]河合塾では、小4は2レベル、小5は3レベル、小6は4レベルに分かれています。ドリルの偏差値が同じでも、実際の学力には大きな隔たりがあります。ただ、下のレベルのトップ集団と上のレベルのラスト集団はほぼ同じです。従って、上に上がって日々の成績が伸びなかったり、下に下がって日々の成績が上がったりするのは当然のことです。ただ、下がっても上がっても日々の成績はほぼ同じという器用な生徒がいますが、結局はそのクラスのレベルに合わせて勉強しているようですね。
河合塾に通塾している生徒の多くは、学校では上位にランクされています。学校での成績は全く参考になりませんヨ。そのギャップを理解して下さい。
 
 

23.家庭や学校では「良い子」だから、塾でも「良い子」と考えている

[説明]学校での態度と塾での態度が全く異なる生徒がいます。子供たちにとって、「塾とは社交場」であり、保護者には連絡のいかない場所と考え、かなり横着な態度でいる生徒がいます。一度、担当の講師やチューターに、その当たりのことを訊ねておくことが大切です。
 
 

24.子供を信用しきっている、逆に、子供を信用していない

[説明]どちらに傾いても、よくありません。人は自分を悪く言いたくはありません。様々な理由をつけて自分を良い子にしたがります。問題が起こるたびに、現実はどうなのかは、チューターや講師に直接話しを聞き、情報収集した上で、問題毎に結論づけて欲しいものです。
 
 

25.時間がないと言い訳をしている

[説明]受験は過酷なものです。受験生は選別される側なのです。言い訳は通用しません。受験を選択した限り、時間は作るものです。一度、生活パターンを見直して、一週間のスケジュールを組み直して欲しいものです。
 
 

26.講師を信頼していない

[説明]保護者が講師を信頼していないと、子供にもそれが伝わります。伝わると、授業中に講師の説明を聞かないばかりか、なめてかかることになり、その時間が無駄になります。保護者と講師の大学受験期の学力を較べた場合、講師の方が低いことがありますが、それであっても保護者が子供にそれを言うことは避けたいものです。少なくとも、中学入試のエキスパート(専門家)であり、子供に信頼させる方が得策です。

 日本の諺:海の事は舟子に問え、山の事は樵夫に問え

 
 

27.河合塾は大きくて他の塾のように懇切丁寧、相談に乗ってくれそうにない、と思っている

[説明]]「河合塾は大きくて講師と保護者、生徒との距離を感じる」「一人一人の事を親切には見てもらえない、ほったらかしにされている」などあまり良くない話もあるようです。また、「レベルの高い講師ほどレベルの高い子供しか面倒を見ないし、保護者ともまともに話すらしようとしない」と思っている人も意外に多いのではないでしょうか。
 決して、そのようなことはありません。担当 していないクラスの生徒や保護者からの質問や相談にも、多くの講師は積極的にお答えしています。もし、親身に答えない講師がいましたら、教務に相談の上、別の講師を紹介してもらって下さい。結構、厳しい対応をしますが、私・倉本でも結構です。
 
 
 以上をまとめれば、子供達の成績を伸ばすことができるとすれば、まず親子の関係がしっかりして良好であり子供がある程度自立していることです。それを土台に家庭での学習、塾での学習があり、学習や受験の不明な点については、積極的に塾の講師や志望中学の教頭などに質問をぶっつけておくべきです。
  これらの行動力や決断力は、親業としての一つの役割であり、子供達を指導していく上で、重要になってくるはずです





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