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受験算数[算法]と方程式についての一考察

=試作段階=

当レポートに対する反響と回答

★いつの間にか完成するのを忘れてしまいますが★

kuramoto 骨格完了日2003.04.25

多くの保護者が方程式に傾倒する理由
立式が簡単な問題は算法でも簡単
方程式でやれる限界
算法は子供の成長過程では重要
線分図・面積図より?も大切なものがある
難問が解けない原因は算法のせいではない
それでも方程式という場合の注意
大手塾で方程式を教えない理由
算法の限界
算法と方程式の複合活用
方程式よりも算法が優れている問題群
どちらかといえば算法が優れている問題群
算法と方程式の複合利用の例証
わたしの教え方
追加:算法と方程式の中学入試問題での比較法

★多くの保護者が方程式に傾倒する理由★
 極論してしまえば、算法を知らず、受験算数を知らず、子供の成長過程が何であるかを知らないからである。
 自分の記憶の中に文章題といえば、方程式という図式から抜け出せず、知らないことに対する貪欲な好奇心と研究心の欠如からくるものである。
 そして、自分が子供だった頃、知識はどのようにして習得していったかが思い出せないからでもある。
★面積図に問題がない訳ではない。連続量である速さ(距離)を面積で考えさせること自体、かなりの抽象度を秘めている。「線が面積になる訳はない] それに拘った保護者もいたが、その方は優秀だったと尊敬しています。

★立式が簡単な問題は算法でも簡単★
 立式を前提にしなければ、公文で十分である。問題は立式できないことにある。
 しかし、保護者が塾通いを始めたときに、最初に目にするのは、パターン化した単純な問題群である。これなら、自分では理解し難い【線分図】や【面積図】などの算法を使わなくてもいいのではないかと思いこんでしまい、その後の【線分図】や【面積図】の理解の習得には真剣になれないだろう。算法を理解せずにいつの間にか、アンチ算法派に与してしまっている保護者が多い。
 ただ、これらのパターン化した単純な問題群だけ解けても、果たして、どのレベルの問題まで処理できるのだろうか。
 方程式の立式が簡単な問題は、算法でも簡単なのである。
※以下、ここでの算法は、【線分図】、【面積図】などの図解をさすことにする。

★方程式でやれる限界★
 受験算数では、中1、中2の方程式のレベルの問題だけではない。
 中2の発展である多元連立方程式、今はなき連立不等式、中3の二次方程式、高校の不定方程式まで出題されている。
 これらをすべて方程式で処理しようとなると、かなりの学習量が必要になる。しかし、受験生は高々2〜3年の学習期間しか与えられてはいない。その間に、新出事項の学習をしなければならない。それらを習得しながら方程式を学習するには無理がある、と考えるのが常識ではなかろうか。
 ただ、四谷大塚や日能研の80%ラインの偏差値が60までの女子中であれば、合否の分かれ目の多くの問題は連立方程式止まりであるから、十分学習することは可能ではある。しかし、55を超える男子校や難関・超難関中となるとそうはいかない。
 なお、連立方程式までであっても、【正負の数】、【移項の概念】と【文字式の表し方】は正しく教え込んで欲しい。その理由は、中学で数学を学習するときにいい加減な処理方法が【認知】されていると、それを矯正するのが並大抵ではないからである。それが数学での足を引っ張る原因ともなるからである。
[参考] 難問にも流行がある。ダブル部分もあるが、その中心は?
★不等式では、過不足算の発展として、80年代後半に頻出
★二次方程式では、図形問題を中心に、90年前後に頻出。四角い頭を丸くする、かな?
★不定方程式では、条件不足のつるかめ算が中心で、90年代後半から、現在に続いている
★では、現在の難問は?といえば、残念ながら、方程式の世界ではなく、【規則性、作業問題】である。

★算法は子供の成長過程では重要★
 小学生の低学年では、具体性の中で学習してきた。それは見えるものがすべてであり、1つの事柄から推測するという思考回路は、まだ芽生えていない。
 4年あたりから徐々に抽象化された世界へと入っていく。目に見えない世界である。しかし、子供の多くは目に見えない抽象的な内容になかなかとけ込めずに留まっている。「1を知って10を知る」、ことができないのである。               ※この項の若干の説明はココ
 4年生までは天才、5年生では秀才、6年生ではただの人、と言われる生徒の多くは、この具体的な世界から脱却できなかったことに原因があったと考えている。
 この抽象化の大波の渦中で、一応、完成した?抽象化された方程式だけで学習させることには、反対せざるを得ない。具体性と抽象化の狭間にあるこの時期を乗り切るためには、その綱渡しの役目を担う【算法】が、子供たちの成長過程ではより優れているし、重要だと考えている。
 このことは、抽象化された方程式にはない【量感覚】が算法にはあることを意味している。「1対多対応」になっていない年頃では、具体性の中での学習が望まれる。紙面だけの学習よりも実験による学習の方が知識の定着度が高いのも、そのためである。
 なお、学校教育では、この時期の主たる処理方法は、表を併用した【変わり方を調べて】である。このようなコーナーが教科書にある限り、いかなる文章題でも、教科書の範疇から外れることはないと、思っている。この方法でも難問が解けるのである、解答時間を無視すれば。

★線分図・面積図より?も大切なものがある★
 受験算数では、【線分図】や【面積図】(【天秤図】)よりも大切なものがある。それは、【割合・比】である。特に、【比】は、【逆比】を含めて正確に縦横に使い切れないと、受験算数を乗り切ることはできない。
 私は、
   
♪比を制するものは、受験算数を制する♪
と確信している。
 比は線分図でも面積図でも、また、図形でもグラフでも活用される。速さなどは、比のオンパレードである。
 当然、方程式の立式においても重要な役割を果たす。
 逆に、比が縦横に使えなければ、線分図も面積図も、その活用範囲は半減する。
 この比が使い切れている受験生は、偏差値60のレベルでも、6年9月の段階では半分にも満たないのではないだろうか。
※比以外には、算数・数学に共通な【数】の性質であろうか。

★難問が解けない原因は算法のせいではない★
 算法だけで難問が解けない原因は、算法のせいではない。それは、問題文が読めていないためである。その遠因は算法ではパターン化することで、様々な問題の処理方法を教えようとしていることからくる弊害なのかも知れない。文章題を解くときの基本原則を教えることが少ないからでもある。その点では、方程式の場合は自ずから教え込まれることではあるが。
 その点とは、【文章題には等しい関係がある】という単純で基本的なことを指している。このことは、ほとんどの受験生は、言葉として理解しないまま、中学へと突入していく。それは塾の犯罪?なのかも知れないし、算法が数学には生かされないと批判される要因なのかも知れない。
 ただ、【等しい関係がある】ということを認知していればよいか、というとそうではない。【等しい関係】を明白にするための作業が、意外となされていないのが現実である。
 その作業とは、【問題文を整理する】ことに他ならない。この【問題文を整理する】ことは、長めの文章題や複雑な文章題では必修事項ではあり、中学数学でも活用できる方法でもある。
 私は、文章題を解くときの基本原則は、
       1.数量関係を整理する
       2.等しい関係を押さえる
    ことである
と言い切っている。これができなければ、
[解く資格はない]と。
 この後の処理は、【算法】でも、準・方程式の【○□算】でも、【方程式】でも、教科書レベルの解法である【変わり方を調べて】でもよい、これらは単なる解くための道具であると考えている。
 基本的には、上記の2つの作業をせずに質問にくる受験生には答えないことにしている。
      ※何も知らない保護者からは、教務にクレームが入ることが多いが。
 それらのことが実感として分かってくるのは、偏差値60以上の受験生でも、9月に入ってからである。多くの受験生は認識しないうちに中学へと進学していく。
 以上をまとめれば、あるレベル以上の問題に対する処理能力は、次の2つである。
読み取りの力  [整理して等しい関係を押さえる]までは、算数の力ではなく、読み取りの力である。
 整理の方法には、問題によって様々な方法があり、それをどこまで知っているかが問題の処理能力につながることもあるが、それをマスターするのは、演習量を積む必要がある。
算数・数学の力  [等しい関係]を押さえた後が、算数・数学の力である。
 この段階での
【解くための道具】は何であっても構わない。算法でも、○□算でも、方程式でも、場合によっては「変わり方を調べて」でもよい。
 ただ、問題によって使い分けられる能力が備われば、解答時間の短縮につながることは言うまでもない。解くための道具は多ければ多いほど処理能力は高まる。
  ※同じ読み取りであっても、算数と国語には大きな違いがあることも認識しておきたい。
算数= 等しい関係を押さえる。人間の感情は無視される。
国語= あいまいな?関係を押さえる。当然、人間の感情が伴う。

★それでも方程式という場合の注意★
 [★方程式でやれる限界★]でも書いたが、方程式だけで指導する場合、
        【正負の数】、【移項の概念】、【文字式の表し方】
は正しく教えること。
 算数の解き方は、100人おれば100通りの解き方がある、と思っている。それは、受験算数はマニュファクチャな世界のためである。しかし、数学はオートメーションな世界のため画一化された方法で処理されなければならない。そこには様々な約束事がある。この約束事を正しく[認知]させることが重要なのである。繰り返すが、間違った知識が【認知】されてしまうと、中学での矯正が並大抵ではない。
 ここで本題に戻す。[それでも方程式]という保護者の方は、次のことを実行していただきたい。
1.方程式オンリーにはしない。
2.文字での表示よりも、数量を○□での表示を優先させる。 (例1)
  →塾の教材では、線分図、面積図で○□を使っているので、
                         新しいことを学習しなくてすむ。
   また、中学に入ってからの方程式への切り替えが可能。
3.最低限、【線分図】は理解させる。 (例2、ア=イ)
  →線分図によって、正負の数や移項の概念の説明が省略できる。
4.[分配法則]と[両辺に同じ数を掛けても割っても同じであること(等式の性質)]は熟知させる。
5.学習の進行状況で、線分図を徐々に外していく。

★大手塾で方程式を教えない理由★
 受験算数では、教科書にはない事柄やテクニックを数多く教え込まないといけない。
 そして、吸収の早い生徒ばかりが集められているわけではない。ある程度の生徒レベルまでは、理解させ、習得させる必要がある。そのためには時間をかけないと、これらの事柄やテクニックが習得されることはない。まず、新出事項の説明 (その多くは図解、量感覚をつかませながら理解させる) から始まって、応用問題までこなさせようとすれば、自ずから、方程式を教える時間的余裕は無くなっていくのである。
 余裕があれば、家庭で教えていただければよい、と考えているのではないかと思う。方程式を使わなくても解けるからでもある。
 余談ではあるが、テクニックを教えないと商売にならないのかも。

★算法の限界★
 では、算法だけですべてが解答時間内に解けるかと言えば、不可能に近い。ある種の問題では、線分図であれ面積図であれ、かなりのテクニックが必要になる。何年もかかって習得した一応のプロフェショナルであり大人である私たちからすれば、そのテクニックは面白いのであるが、それを習得するには、2年や3年で、それも12才の受験生には無理があるかも知れないし、当然、無理だと思っている。
 ちょっとしたテクニックが必要な問題でも受験生の多くは処理できず、解けている答案では、意外と【変わり方を調べて】であり、【○□算】であり、【方程式】の場合も多い。ほぼ【算法】で処理している受験生と拮抗している。この当たりが、算法の限界なのかも知れないし、家庭学習の成果なのかも知れない。
※現在、教科書レベルの【変わり方を調べて】を昇華した
【もがき方解法】に興味の重心が移りつつあります。

★算法と方程式の複合活用★
 [★難問が解けない理由は算法のせいではない★]で、私は、
   文章題を解くときの基本原則は、
       1.数量関係を整理する
       2.等しい関係を押さえる
  ことである
と言った。
 ここまで処理できても、一つの解き方にこだわると、意外と手こずる問題に出くわす。式の立て方が見えてこなかったり、二次式、多次方程式になったり、疑似二次(方程)式になったりするからである。このような問題では【算法】と【方程式(○□算)】の複合利用が効果的なこともある。
 すなわち、柔軟な処理能力が難度の高い問題では要求されているのが、受験算数なのである。
 ただし、ここ数年、全国的に易化傾向にあることは確かであり、今後はどうなるかは分からない。
※今後、問題例を挙げたいとは思っていますが。

★方程式よりも算法が優れている問題群★
 問題例を挙げませんが、内容としては、相当算の発展問題としての「残りの・・・」的な問題と食塩水などです。やり取りの問題も方程式での立式は面倒ですね。
問題例1 問題例2 問題例3 問題例4 問題例5 問題例6

★どちらかといえば算法が優れている問題群★
 ここでは、算法ではそれなりの加工が必要ですが、慣れてしまえば、方程式よりも簡単な問題を取り上げました。
問題例1 問題例2 問題例3 問題例4 問題例5 問題例6

★算法と方程式の複合利用の例証★
 ここでは今後実例をご紹介していきます。ただ、以前の問題を探してきてもいいのですが、後戻りはしたくないため、新しく見つけ出した段階で、増殖していく予定です。といって、いつの間にか、このコーナーの存在を忘れてしまうのが、いつもの慣わしではあります。すぐに関心がなくなる性質ですので、お許しを!。
問題例1 問題例2 問題例3 問題例4 問題例5 問題例6

★わたしの教え方★
 それは、私、個人の秘密です。 K塾、総体としての教え方ではありません。
 さほどのノウハウではありませんが、一応、商売道具であり、生存するために、お見せすることはできないのです。
 ただ、チャレンジ問題の解説などで活用していますから、それを継続して読んでいただければ、見えてくるかも知れません。
※[
★それでも方程式という場合の注意★]を活用しています。

★追加:算法と方程式の中学入試問題での比較法★
 算法 (図解、仮定) と方程式での比較をされる場合、次の点でチェックされたい。
  1.受験生(小4〜小6)にとっても大人(保護者)にとっても、どちらが早く処理できるか
  2.受験生にとって、どちらが納得できるか
 このチェックによって、家庭内での指導方針を決定していただければと思う。
 当HPでのこれらのチェックは、これまでに解説した問題は一般の方にはオープンにしていないため、毎週4問〜5問の割合で出題している【チャレンジ問題】を活用していただければと思う。
 方程式で処理された方には、管理者の場合のおよその解答時間を添えさせていただきます。
 なお、当HPでは、準・方程式である○□算で処理してある問題は、方程式とほぼ同じか方程式の方が優れていると考えていただいて結構です。

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