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2003/ 4/27 10:48 メッセージ: 98
投稿者: nyandanu |
>はじめまして。tamatebako110さん。
ご丁寧に「受験算数と方程式」のレポートをお送り下さいましてありがとうございます。非常に興味深く読ませて頂きました。具体から抽象への途中の発達段階への橋渡しとして「面積図」「線分図」があるとの考え方は、説得性のある論理と思います。
しかし、私には以下のような疑問があります。
私は、子供の頃中学受験は経験せずに、公立中学、都立高校をへて、国立大学の工学部へ進み応用数学を専攻しました。子供のときに中学受験は経験しなかったことから、「線分図」「面積図」といった算数の便法は、知らないまま方程式を学びました。大学受験のときも大学に行ってからも中学受験にて「面積図」「線分図」を学ばなかったことで困ったことは一切ありませんでした。ですから、「線分図」「面積図」といった算数の便法は、将来への絶対に必要な知識ではないと思っています。
→私も中学受験をしていませんから、線分図・面積図なども知っていた由もありません。特に、面積図は70年代初頭にはほとんど使われていなかったように思います。90年代前半の啓林館の教科書では、6年で1問か2問のみ掲載されていました。
ただ、「将来への絶対に必要な知識ではない」ということには反対せざるを得ません。それは学問の考え方の違いからくるものかも知れませんが、「必要だから勉強する、必要ではないから勉強しない」という性質のものではないと、考えているからです。人生など無駄の集積であり、いつ報われるか分からない無駄を集積しながら、様々な知識を学んでいると思っています。
>一方「線分図」「面積図」といった算数の便法に熟練する目的は、ほとんどのケースは興味というよりか中学受験を勝ち抜くためと思います。
中学受験を勝ち抜くのは、とにかく「正確」「確実」「早い」といったことが必要ですが、これはまさに方程式にとって最も得意の分野と思います。
→方程式が最も得意分野とするかどうかは分かりません。
機能的な面ではそうかも知れませんが、様々な事象(公式、考え方)を理解させるには、方程式(文字式)とその変形だけでは無理があると思っています、特に下位層には。理解させないままに突き進んでいくと、躓いたときの戻りどころがありませんから、危険きわまりないとも思っています。
私は方程式がいらないとは言っているわけではありません。方程式だけで理解させようとすると、ほとんどの生徒が崩壊する可能性がある、それ以前に数量関係の理解が先決であり、それを押さえることを優先するべきだと言っているのです。
このことは、中2の二次式の乗法公式を説明する場合、面積図を活用しているはずです。また、整数での【合同式】、比では【加比の理】、また【不定方程式】などの数学の基本概念に算法を導入すれば、多くの高校生が文字式の変形だけで理解させられるよりも理解できるのではないかとも考えています。
マスとしての多くの受験生に、算法と方程式を同時に、基本概念を限られた時間内にキチンと教え込むことには混乱を生じさせるだけで、無理があると言っているのです。当然、適当に理解させることはできるかも知れませんし、個人的にやられるのは勝手です。
ただ、学校説明会などで、方程式を使って解いてもいいか、との質問がよくでるそうです。そのとき、ある学校側の説明では、方程式で処理できるような問題を出さないようにしていると回答しています。
余談ですが、その中学の一部の問題では中学方程式で処理できる問題が出題されてはいましたが。あくまでも中学数学の範疇ですから、高等数学の範囲では出題されています。
>算数の便法は、いわゆる味のある手作りの世界であり、得意の人にとっては大変おもしろい世界ですが、どちらかというとあまり得意でない又は器用でないお子様もいると思いますが、このような人は是非とも、方程式を主体に学ばれるほうが、中学受験には圧倒的に有利と思います。料理だってあまり得意でない人は、冷凍で電子レンジでチンするだけの方がはるかに楽ですから。勿論、優秀な人で、算数の手作り的な手法がとても好きという人は方程式を学ぶ必要はないでしょう。
→家庭内でどのように指導されようがそれは勝手です。
ただ、「チン」がどれほどむなしいかをご理解いただければと存じます。
工場生産で言えば、所詮、「方程式」は「ライン」でしか過ぎません。決して、「スタッフ」にはなれないのです。
失敗しながらも考える力、それをつけてこそ、人間には進歩があると思うんですが。
なお、「算数の手作り的な手法がとても好きという人は方程式を学ぶ必要はない」というのは逆です。「方程式をやりすぎて、その機械的な手法にむなしさ?を覚え、マニュファクチャな世界に戻ってきた」、と考える方が筋ではないかと思います。
※ここでの「戻ってきた」というのは数学史の中でのお話です。個人の幼少に戻ったという意味ではありません。エジプト・ギリシャ数学への回帰なのかも知れません。それはややもすると、小学教科書の純朴な?世界なのかも。
>方程式を中学受験にて使った場合の副次的メリットは、中学に進学して有利なスタートがきれるということです。「面積図」「線分図」といった算数の便法は中学になったら、すべて忘れなくてはなりませんが、方程式を学んだ人はそのようなことをする必要はありません。算数の便法を中学受験のために血のにじむような努力をして修得した人にとっては壮大な無駄でしょう。また完全に忘れられる人はいいほうですが、中学受験の時に叩き込んだ算数の便法が体に染み込んでしまって代数に移れない人は大きな悲劇になります。中学受験と高校及び大学受験には、連続性はその意味では、あまりないかもしれません。昔、私が教えた中学3年生の生徒で、どうしても方程式で解くことが出来ずに、中学受験の頃に叩き込まれた算数の便法しかできないという人もいました。これは極端な例かもしれませんが。
→この件については同感です。特に、中学受験を経て公立に進まれる生徒には危険です。その理由は、中1、2までの内容であれば、受験算数でこなすことが可能だからです。そのまま中3になっていきますと、【二次の世界】で一挙に崩壊してしまうからです。そのときにやり直しても、2年間のブランクを取り戻すのは並大抵ではありません。
そのため、私の場合、算法オンリーではありません。準・方程式である○□を多用していますし、最終的には、線分図を外して考えるように誘導しています。
ただ、下位層については、両方習得するだけの余裕はありませんから、塾のメインである線分図・面積図で解説することが多くなります。このレベルでは、どちらの方法(算法、方程式)でも差異が認められないからです。場合によっては、パターンで処理させるのが一番なのかも知れません。その理由は、問題文の内容が理解されていないことが多々あるからです。
>また、とても不思議なのが開成とか麻布とか灘といったいわゆる算数の便法を極めたプロの人達は、大学受験になるころには例えば東大の現役合格は3人に1人も果たせないのですね。これは、中学受験と中学以降の勉強方法に違いが出てくるためでしょう。
→私は、このことで、受験算数を悪者にすることには反対です。受験算数とは関係が薄いと考えています。
1週間の受験勉強が24時間に及ぶといわれる首都圏・関西圏の塾の学習方法に問題があるのではないかと思います。学習は自学自習が基本です。24時間の塾漬けでは自学自習などできるわけはありません。単なるモルモットでしか過ぎないのです。このようになったのは「お受験の世界」が原因していると思っています。
また、東大を受験する生徒が全員中学受験を経たわけでもありません。中1段階での学力は、明らかに、中学受験を経た生徒の方が勝っているでしょう。しかし、中学受験をしない優秀な生徒は、首都圏であれ、関西圏であれ、その他の地方であれ、基本的には人口比率に見合うだけの数はいるはずです。
スタート・ラインに差があったところで、6年間に逆転することは可能だからです。また、伸びきった?学力で合格してしまった結果、その後の伸びは緩やかなものになるのかも知れません。
このことは、以前、灘中や今は落ち目のラ・サール中の教頭から、次のようなことを聞きました。
地方出身者が欲しい。伸びが違う
と。
また、灘に行った生徒も1年の最初には後半に位置していましたが、2学期には既に真ん中より上位になったとの報告も受けています。あくまでも一例ですが、ラ・サールに行った生徒も同じような経過をたどっていることが多いようです。
※私が所属しているK塾は、もともと自学自習を前提に考えています。ただ、それでは、家庭で面倒が見れなくなってきている風潮から塾戦争に打ち勝てないため、ある程度は予習クラスも設けてはいます。
追1:私立学校が志望大学・学部を決める訳ではありません。受験生の意向と可能性によって大学・学部が決められていきます。そのとき、医学部指向があれば、東大・京大の枠に拘らないでしょう。したがって、東大・京大の数字を云々するだけではなく、学部も含めて考える必要があります。
追2:公立高校の場合、どうしてもスタート時点と指導の内容に私立とは差がありますから、現役では難しくなることも多々あります。従って、1年余分に年を食うことも覚悟する必要がありそうです。
>中学以降高校。大学とスムースに勉強を軌道に乗せていくためにも、方程式のツールを中学受験に使うのは大きなメリットがあると思います。なお、方程式のツールを使うためには、負の数、式の操作といった概念を正確に教える必要がありますが、これは「線分図」「面積図」を習熟させるよりもはるかに楽でしょう。私は、今まで、子供達にすべて方程式を教えてきましたが、「メリット」こそあれ「デメッリト」は一切ありませんでした。子供には、「面積図」「線分図」の算数の便法も教えましたが、子供のほうから自発的にすべて方程式のほうを選んでいます。私の教えた子供はどちらかというと要領の悪い算数の不得意の子供でした。算数の便法「面積図」「線分図」にはどうしてもなじめないが、中学受験で有利な戦いがしたいという人にとっては、方程式は大きな味方になるでしょう。このことは、本当に声を大きくして叫びたい気持ちです。
→どちらがいいかどうかを判断するための材料は、私にはありません。また、方程式を教えることのメリット、デメリットも言及するだけの経験もありませんが、ただ、算法(図解)は中学・高校での基本知識を理解させるのは必要になることもあるのではないか、と直感的に感じているだけです。骨格完了日2003.04.27
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