子供たちは、何故、間違えるのか?
出来ないのか?


=Ver.1−1 (99.1.8)

倉本 徹
 

  「 基本的な事柄はすべて理解しているのにも関わらず、うちの子供は、問題が解けない、答えを間違える。どのようにすればよいのか」との質問を受けます。

 このレポートは、それに少しでも答えるべく、原因とそれに対する説明を、分野に分けて作成しました。ただ、このレポートでは、それぞれの処方箋は提示しません。
その理由は、我々講師に与えられた使命は、一つの問題で、そのレベルに応じた解き方を1〜2ほど提示(解説)して、後は自学自習に任せることにあるからです。それが河合塾のシステムにもなっています。(※自学自習できない生徒のための予習クラスも有り)

 一人一人の間違いのチェックは、時間的に無理があるのも現実です。ほぼ式が書かれている答案の多くは、考え方は決して間違えてはいないはずです。そのため、どこでどう間違えたのかを保護者の方が隅から隅まで目を通してチェックして欲しいものです。それがの親業(おやぎょう)一つだと、私は言い続けています。
(※当然、発見できないときもありますから、そのときには遠慮なく、我々講師に質問して下さい)

 このレポートをすべて読んでいただければお分かりいただけると思いますが、結局、子供たちが間違える、出来ない原因の多くは、やってはいけないことをやっているからに過ぎません。決して能力の問題ではないはずです。その遠因は、やってはいけないことをやっても優等生でいられる子供たちの集団に対して、その能力に応じた教育が学校ではなされていないためであり、さらに、保護者がそれに甘んじて低学年のうちに正しい方法を習慣付けてやらなかったためであると思います。

 やってはいけないことをやらせない習慣、癖をつけさせることが、その対策になるのは当然のことです。癖をつけるためには、保護者の多大な関与と指導が必要になります。しかし、10才以上になると、出来のよい子供ほど、自分のスタイルを形作ってしまっており、それに拘泥します。それは、そのような方法で、優等生になっていられたためです。その自尊心を叩きのめすこと、そのためには成績が悪かったとき、間違いが多かったときに、その原因を徹底的に追及し、本人に知らしめ、納得させることが必要です。再度、同じ過ちを犯したときには、洗脳に近い形の方策が必要になってくることもあります。優等生ほど矯正しにくいのはそのためです。

 かなり過激な表現になりましたが、ここで一応、全般的な処方箋らしいことを述べておきます。


@ 間違えたときには、どこで間違えたのかを保護者が点検し、自分のやりかたでは間違えることを自覚させる
また、自覚なしでは直らないこと、入試でのその失点の恐ろしさを認識させる。
A 出来なかったときには、正しい方法でやれば出来たのだということを、感動させながら認識させる
感動を伴わない場合、効果は低くなります。(※講義では、この感動を与えるよう努力しています)

上記の2点が実行できれば、成績は確実に上昇するものと思われます。
当然、我々大人であっても、医者から、酒を飲んではいけない、煙草を吸ってはいけない、などと注意されますが、身体に悪いと知って(?)いながら、やめられません。子供たちにも、やってはいけないことをやらせないことは難しいことだと思います。しかし、それをやめさせない限り、同じことを繰り返すのが人間の性(さが)なのです。

 ここでの内容の多くは、【具体性】⇔【抽象性】の問題です。 具体的世界から、目に見えない世界、抽象的な内容に突入した小学5年生以降の学習内容のことと一致します。
「間違える生徒」の多くは、知らず知らずのうちに、自ら禁断の果実を手に入れるべく抽象的なものをより【抽象的】に扱ってしまっているのです。それは成長の過程ではやむを得ないことなのですが、【抽象化】された世界を確実に克服するには、まだ、ものの見方、類推する力、価値観などがしっかりと備わっていない小学生には時期尚早(しょうそう)と言わねばなりません。やはり【具体性】を持たせながら解かせたいものですネ。

 なお、徐々に成績が下がってきたときには、意外と肉体的・精神的な問題に起因することもあります。 特に、視力の問題が多いようです。受験を選択した限り、マイナス要因は出来る限り排除することが必要です。
いくら黒板に近い場所にきても、何ら解決にはなりません。黒板の字や数を読むことに神経を集中させていては、一番大切な考え方まで吸収することが不可能だからです。是非、抵抗感があるとしても、メガネを買い与えて上げて下さい。河合塾の講義中だけでも結構ですから。


例示を添えるべきですが、現時点ではご勘弁を!

このレポートの姉妹編である【
伸びる子、伸びない子、どこが違うのか?】と重複する箇所もあります。



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