月刊アルバイトニュース
82年9月6日 Vol.2666

  これだけ時代の移り変わりがめまぐるしくなると昨日まで流行の最先端だったモノでも明日にはすたれてしまってあたりまえのような気がします。
 それは映画においても例外ではなく、華やかな話題を提供してくれた超大作も1年ないし2年過ぎれば誰も気に止めず忘れ去られることもしばしば━。映画ファンにとってはなんとも淋しいものですね。特にこの名古屋の地は激しいそうです。東京では名画座で見ることができるが名古屋にはそういった場所がないのもその理由のひとつでしょう。
 今回紹介する「名古屋シネマテーク」は大学生4人、社会人4人のスタッフで運営する自主上映の仲間たちです。
 ここの代表者倉本さんは大学の映画研究会で活躍していた頃から上映会を続け卒業後も本職と両立させているこの道11年のベテラン選手であります。3年前、病気で倒れるまではあっちの会場、こちの劇場と走りまわって上映会を行ってきました。病気が治ってからは劇場を移動するのもしんどくなり、そろそろ自分たちのスペースを設けようと今池スタービルを本拠地にしました。
 名古屋シネマテークのOPENは今年の6月27日。一般の映画館のように何百〜何千を収容できる座席などとてもありません。補助イスを要れて約60席ぐらいのせまい所です。来てくれるお客さんは昔からのおなじみさんや学生、ちょっと年のいった人まで様々。共通しているのは、みんな映画好きなこと。
 普通、お勤めしている人が仕事を終えてから映画を見ようとすると、おそらく6時すぎぐらいになるのではないでしょうか。それから1本だけ見て閉館というパターンに悔しい思いをしたことはありませんか。名古屋シネマテークでは社会人のお客さんもけっこう多く、そういう人たちのために遅くまで上映をしてくれます。
 料金も安く、一般の当日売りで1本だけなら700円、2本立てなら1000円。(モノによって少々違います。)
 上映は毎日というわけにはいかないのが残念なところですが、毎週金・土・日を基本に祭日などをかけてやることもあります。
 なぜこのようなことを始めたかというと、もちろん映画が好きなことは当然で、ただそれだけなら普通の劇場でも充分に事足りるわけです。しかし、「感動」する作品にはなかなかめぐり逢えません。たといそういう作品があったとしても短期間のうちに終わってしまい、後から見たくなってもなかなかやらないものです。その思いを自主上映にぶっつけたのであります。倉本さん自身、今までに「感動」した作品は数えきれないぐらいあります。その中から数本選出してもらったところ「黒木太郎の愛の冒険」、「東京物語」、「三里塚辺田部落」など、どれもなじみのない作品ばかりですね。けれどもマニアにとってみれば、“アァッあれも見た、これも見た!”と、すぐストーリーが頭の中に浮かんでくるのではないかと思います。一般に知名度がなくても名作と呼べるものはたくさんあるんですね。
 ついこの前まで学校が休みで学生さんのスタッフがよく頑張ってくれましたが学校が始まれば彼らも忙しくなってくる。学生スタッフの学業・仕事とシネマテークの両立が今後の課題になっているようです。
 名古屋シネマテークが力を入れている作品に来年の4月に上映予定の「ニッポン国古屋敷村」があります。ある部落が水底に沈んでしまう。そこに生きる住民の葛藤と開拓による自然破壊を描いている作品です。最近、富に自然保護の声が高まっています。その意味でも一度見に行ってもいいのでは━。
 このような企画はスタッフ全員で話し合い倉本さんの意見は2割から3割ぐらい。あとは他のみんなが決めるわけです。後々には倉本さんも決定権だけを持ち、後輩に内容のことはまかせるような感じであります。
 自主上映を積極的に行っているサークルは東京近辺には少しずつ増えているけれど、中部圏においてはまだまだ・・・・。
 話題性たっぷりの映画もいいですが、知られていない名作を見るのも良いですね。
名古屋市千種区今池1丁目6−13 今池スタービル2F
9月10(金)〜12日(日)の上映予定をお知らせしておきます。
9月10日(金)
●オートノミー、色即是空、アートマン●石の詩、母たち●16歳の戦争
9月11日(土)
●気・BREATHING●西陣●修道
9月12日(日)
●エニグマ、ホワイトホール、コネクション、BELATION●薔薇の葬列