劇場ロビー
 

中日スポーツ 78年11月24日

夢野 見過

  中京地域における、市民文化活動の向上発展を目標に「都市文化会議」という名称の奨励機関が発足した。委員は各界の代表者15人で、前述の目的にかなった文化活動を対象に、毎年一回表彰を行うということで、三つのグループが、本年度第一回「都市文化会議奨励賞」を受賞した。その中に「ナゴヤシネアスト」という会がある。
 受賞の理由は「昭和46年スタート以来、全国的にもユニークな自主上映組織・研究会として、一貫して地道に、名古屋における映画文化の向上のために努力してきた。従来だと、たとえば東京の岩波ホールまで行かないと接し得ないような作品も、シネアストの活動によって、地元で観賞できるようになった。そのような実績を踏まえ、本年度は“映像名古屋”と提携して“夢あざけりし風のように”を制作し、鮮烈に現代の青年像を描きあげた」というのが、受賞の理由である。
 なにはともあれ、受賞おめでとう。実際、この会が、過去7年間に、自主上映した作品数225本。そのうち名古屋地区初公開が27本、という数字そのものが、僕に至難の業に思える。一本の未公開作品が上映されるまでの時間と労力、さまざまな障害を思うにつけても、彼らの映画にかける愛と情熱の強さのみが、なし得た実績だと言っても、過言ではない。
 「どういう作品を選ぶか、についての迷いはない。自分たちが見たいかどうかが先決で、作品の知名度や、観客動員数は二の次」。このあえて資本の論理を無視した基本方針にはざ折という言葉は無縁であるり、自主上映は、本来こうあるべきだという確信が、会の支えになっているのであろう。
 中京地域には、多くの自主上映グループがあると聞く。シネアストへのささやかな拍手(受賞)が、興行界の落ち穂拾いという、ほんとうの文化を育てる地の塩となるよう、願ってやまない。